「DX化したいが、どこから手を付ければよいか分からない」
概要
これは多くの多店舗事業者が直面する壁です。日報・シフト・発注・経理がツールごとに分かれ、同じ内容を何度も入力する――そんな構造的な負担に悩まれていた焼肉さんあい(株式会社サンアイ)様に対し、U'eyes Designは「DX健康診断」を実施。本記事では、現場・本部・経営の声から業務情報の流れを「人間中心の視点」で読み解き、店長と本部の負担を同時に下げる「次の一手」を設計した取り組みをご紹介します。

焼肉さんあい(株式会社サンアイ)様の現場・本部にてインタビュー・観察を実施
背景:DX推進の「最初の一歩」をどう踏み出すか
埼玉県志木市に本社を置く株式会社サンアイ様は、焼肉店「焼肉さんあい」を中心に、複数店舗の飲食店運営、精肉専門店、楽天市場での通販事業を展開されています。日報をハブに「シフト→勤怠→給与」「センター仕入(FAX)」「経理入力(iCompass)」など多くの業務情報が連鎖する中で、転記・貼付・メール便回収・差し戻しが点在し、月末に確認工数が集中する状況がありました。
社長様からは、次のようなお悩みをご共有いただきました。
- 業務の二度手間・三度手間:各店で入力したものを本部で再度入力・チェックしている。
- 独学でのIT運用に限界:社長主導・少人数で運営しており、自動化・効率化したいが進め方が分からない。
- 優先順位の判断軸がない:どこから手を付けるべきか、現場のリアルに基づく道筋が見えていない。
上記の課題に対して、U'eyes Designは「DXツール選定」ではなく「業務情報の流れを可視化する診断」からのスタートをご提案しました。
取組:人間中心視点での「DX健康診断」
ITツールは、導入するだけで業務を変革してくれる「魔法の杖」ではありません。ツールはあくまで「道具」であり、主役は道具を使う「人=従業員」。今回の取り組みでは、現場の事情や気持ちを踏まえ、業務実態の可視化と段階的な改善ロードマップの策定に焦点を当てました。
<実施内容>
焼肉さんあい様の現場運用を崩さずに「次の一手」を導くため、
約1か月半で以下の3ステップを実施しました。
1社長・店長・バックオフィスへのインタビューと現場観察
- 立場や役割の異なる関係者を選定し、3回にわたって対話を実施。
- 業務の実態に加え、心理的な負荷や「現状を続けている理由」まで丁寧にヒアリング。
2人間中心視点でボトルネックを顕在化
- 「二度手間・三度手間」の構造、「店長業務の中でシフト管理が突出した負担になっている」点を可視化。
- 対話の中から「予約導線の課題」など、当初の依頼に含まれていなかった新たな改善領域も浮上。
3ユーザー視点 × 管理者視点 × 経営視点で具体策を提案
- 現状のExcel・iCompass・既存勤怠運用を壊さず、前段の「入力・受付方法」から改善する方針を策定。
- 投資対効果が高い順に、約1年かけて段階導入する優先順位とロードマップを提示。
最も負担の大きい「シフト管理」を最優先に据え、現場のリアルから優先順位を再構築しました。
現場の声:3つの視点に共通する「次の一手」
<インタビューで浮かび上がった肉声>
- 「とにかく同じ内容を何度もツールに応じて入力しているので、それを解消したい。」― 本部・バックオフィス社員
- 「各店舗から上がってきた内容を本部で再度入力・チェックするのが大変。」― 本部・バックオフィス社員
- 「バイト管理は店長業務としてかなり負担。少しでも工程が改善されれば、違うことに時間を割ける。」― 部長職・店長
- 「予約の仕組みが電話よりもネット主体になっていけば、もっと売上も上がっていく気がする。」― 経営者
<3者の声に共通していたこと>
- 同じ作業を繰り返さない状態へ
「ツールを増やしたい」ではなく「同じ作業を繰り返さなくて済む状態にしたい」という共通の願い。 - 起点は「シフト管理」
店長の最も切実な負担はシフト管理。ここを起点に現場と本部双方の負担が積み上がっていた。 - まず流れを一枚絵で可視化
ツール選定の前に業務情報の流れを可視化し、どの「入口」を整えると後工程が静かになるかを見極める。
成果:段階導入のロードマップを共有
改善提案では、現状の運用を維持したまま、前段の「入力・受付方法」から好循環を生み出す方向性で方策を組み立てました。投資対効果が高く、現場負荷と月末の手戻りを同時に下げる順で優先順位を設定しています。
| 優先順位 | 対象領域 | 概要 |
|---|---|---|
| ①最優先 | シフト管理 → 勤怠 | 店長が最も負担を感じる領域。LINEフォームで提出を統一し、回収・確定・勤怠連携までを標準化。 |
| ② | 発注・仕入 | FAX中心の発注をスマホ/タブレットからのフォーム入力に置換。品目マスタで品名の揺れを抑制。 |
| ③ | 売上・粗利の転記削減 | 既存日報Excelを活かし、自動転記・整形マクロで月次集計を整備。 |
| ④ | 経費・売上 → 経理連携 | 経理向けCSV出力と、未入力/不備の見える化マクロを整備。 |
| ⑤新規追加 | 予約システムの再設計 | ホットペッパー一本足から、自社管理の予約枠運用へ拡張。インタビュー中に浮上した新たな優先課題。 |
現在、焼肉さんあい様では本診断の翌月から、提案した工程を約1年かけて順次実施していく計画で動き出しています。最も負担の大きいシフト管理から着手し、現場運用を崩さない順序で段階導入を進めていきます。
まとめ:現場のリアルから導く「最初の一手」
この事例では、多店舗事業者がDX推進を進めるうえで、「どのツールを入れるか」ではなく「業務情報の流れをどう可視化し、どこの入口を整えるか」を見極めることの価値を感じていただきました。現場のリアルから導かれた「最初の一手」と、その後をつなぐロードマップを共有できたことが、今回の診断・提案の成果です。
DXを成功させる主役は「人=従業員」。現場の作業実態と心理的な負荷の双方に耳を傾けることで、ボトルネックの解消と有効活用のヒントは必ず見つかります。
担当コンサルタントからのメッセージ

シニアコンサルタント 小宮山 学
DXというと、まず「どのツールを入れようか?」と考えがちです。しかし、まず考えるべきは、業務プロセスの「どこを可視化したいのか?」「どこを改善したいのか?」というところです。会社や部門の視点と、現場のスタッフの視点、双方を擦り合わせて体制や業務フローを組み立てる。そして、そのプランが最も効率的に回っていく仕組みを考え、それに沿ってツールを選んでいくのがDX成功の基本的な道筋です。
特に今回のように、社長主導でバックオフィスを少人数で運営している組織では、「やりたい順番」より「現場が一番楽になる順番」から手を付けることが、DX推進の最短距離になります。
- クライアント名
- 株式会社サンアイ(記事中表記:焼肉さんあい)
- 業種・事業概要
- 焼肉店「焼肉さんあい」を中心とした飲食店運営、精肉専門店、楽天市場での通販事業
- 対象領域
- 日報を起点とした業務オペレーション全般(シフト→勤怠/発注・仕入/売上・粗利/経費・経理/予約システム)
- プロジェクト期間
- 2025年夏のご相談から、診断〜開発提案書ご提出(2026年3月)まで。提案後は約1年かけて順次実施予定。
- メンバー
- 小宮山 学(シニアコンサルタント/現場視点のDX推進計画)
- タグ
- DX健康診断 / 人間中心設計 / 業務オペレーション可視化 / 多店舗運営(飲食) / プロジェクト

