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人間中心設計(HCD)プロセスを取り入れた
「レミパンプラス」のリニューアル

デザインリサーチによる仮説立案と検証で、成熟したプロダクトに新たな価値を付与する

概要

レミパンプラス商品写真

レミパンは、シャンソン歌手でタレントでもあり、料理愛好家でもある平野レミさんが考案した多用途型のフライパンです。発売された2001年当時は、焼く・煮る・炒める・揚げる・蒸す・炊くなど、様々な調理が1台でできてしまう深型のフライパンというのは他に類がなく、平野レミさんの個性的なキャラクターと、ダイナミックかつ斬新な料理とも相まって、他のフライパンと比べて高価にも関わらず、累計250万個を売る大ヒット商品となりました。

しかし模造品や類似品が市場に安価で出回りはじめ、売り上げはピーク時と比べると伸びなくなりました。そこで初代レミパンをリニューアルするにあたり、利用者視点でこれまでにない新しい機能を盛り込むために、人間中心設計プロセスを導入することになりました。

弊社には人間中心設計に精通した専門家が多数在籍しており、本プロジェクトにおいても全面的に支援いたしました。

ポイント

  • 「つくる」ための調査、デザインリサーチ
  • 行動観察調査と回顧インタビューで「調理現場のコンテクスト」を捉える
  • デザインリサーチの結果、レミパンプラスに追加された新機能
  • プロトタイプを使った検証評価とその後の反響

プロセス

「つくる」ための調査、デザインリサーチ

従来の製品・サービスづくりにあたっては、よく知られた消費者調査手法であるアンケートやインタビューが行われてきました。これらは,いわば「知る」ための調査であり、現状の問題点を把握するには非常に効率の良い手法です。しかし、問題点の把握だけでは,それを具体的に解決するための新たなデザイン案には繋がりません。これに対し、私たちが行うデザインリサーチは、製品・サービスのデザイン要件と仕様を特定するための調査、つまり「つくる」ための調査です。専門家が直接、人間の行動を観察し、ユーザー自身も気づいていないような使用上の課題を人間工学や認知心理学の見地から特定し、それに対応する解決案(デザイン)を提示する。フライパンのようなシンプルかつ成熟したプロダクトのリニューアルという難しいお題を前にして、このアプローチは必然でした。

行動観察調査と回顧インタビューで「調理現場のコンテクスト」を捉える

事前のインターネットアンケートの結果からは、「手間を少なくしたい」「時間を有効に使いたい」という主婦のニーズや問題意識が明らかになっていました。しかし、その数値データだけでは、新しくフライパンに組み込みたい機能の具体的な要件と仕様を導くことはできません。

ユーザーのニーズや問題意識のどの部分を、フライパンの新しい機能で解決できるのか、そのポイントを見つけるためにも、調理行動の一連の作業を具に知る必要がありました。人間は「慣れの動物」です。使いにくいモノでも、毎日使っていれば無意識にそれに適応することができます。そしていったん慣れてしまうと、明確に不満を感じることはありません。無意識に適応してきた事柄は言葉で表現できないのです。

利用者の無意識な行動の中で、フライパンに関する不満点や新機能の方向性を見出したい場合、有効となる調査方法は行動観察調査です。そこで今回は、利用者が実際に使っているキッチン環境で、フライパンを使った一連の調理行動を観察することにしました。ここで大事なのはフライパン単体に焦点を当てるのではなく、一連の調理行動の中で位置づけられるフライパンの使われ方という俯瞰した視点、つまり利用文脈(コンテクスト)を十分理解した上で、フライパンに求められる新たな機能を考えることが必要です。

一般主婦と調理師についての行動観察調査の結果から、狭い調理スペースの中で、思いのほかキッチンツールの置き場所に気を遣っていることが、自然な調理行動の中から発見できました。

しかしその後、自らの調理中の映像を彼らに見せながら回顧インタビューを行ったところ、そういった手間や気遣いは彼らにとっては無意識の習慣的な行動ゆえ、効率の悪さや顕在的な不満にはつながっていない(自覚がない)ことが分かりました。そこで私たちは、フライパンの機能でこの無駄な一時置きに関連する作業を少しでも減らすことができないだろうか、そうすれば、もっと手軽で効率的な調理行動が実現できるのではないかと考えました。

主婦と小規模飲食店の調理行動において撮影された調理風景の写真。まな板に一時的に集まる菜箸、トング、計量スプーン、コンロの上に一時的に置かれるトングなど。

主婦と小規模飲食店の調理行動

左下:まな板に一時的に集まる菜箸、トング、計量スプーン

右下:コンロの上に一時的に置かれるトング

デザインリサーチの結果、レミパンプラスに追加された新機能

デザインリサーチの結果から、「作業スペースの狭さに起因する無駄な作業の発生をいかに減らすか」、それが新しいフライパンの機能として求められるという仮説が立ちました。これを実現するためにいくつもの案を検討し、フライパンのハンドルにキッチンツールを一時置きできるようにする、というアイデアにたどり着きました。が、ハンドルの美しさと把持のしやすさを損なうことなくそれを実現するには困難が伴いました。そこで、日本を代表するプロダクトデザイナーである柴田文江氏を迎え、この難題に対し、フライパンのハンドルにマグネットを内蔵することでキッチンツールを一時置きできるようにするという見事な解にたどり着きました。この方式なら、一時置きするときにユーザーに自由度があるので、必要以上に意識する必要はありません。非常にシンプルでスマートなデザインを実現することができたのです。

プロトタイプを使った検証評価とその後の反響

次はハンドルに組み込んだ新機能が狙い通りの効果を発揮するか、検証する必要があります。そこで、一般の主婦8名に協力していただき、同一の環境と同一の調理工程で、従来型のレミパンとレミパンプラスのプロトタイプとで比較検証を行いました。検証の結果、レミパンプラスは従来型のレミパンと比べ、キッチンツールの一時置きのための受け皿が不要であること、また、洗い物や拭き取り掃除の回数が減ることが、タスク分析によって明らかになりました。また、「(ハンドルに)置く場所が決まっているので、どこに置いたか毎回迷わずに済む」、「洗い物が減り、調理作業が滞らない」、「気に掛けることが減る」といった作業の効率化に留まらず、安心感にもつながるという意見も得られました。検証の結果、このデザインは妥当であったと証明されたことになります。

その後レミパンプラスはその利用者視点を徹底させた取り組みが評価され、2016年グッドデザイン賞、日本人間工学会グッドプラクティス表彰制度では「優秀賞」、HCDベストプラクティスアウォード2016では「最優秀賞」を受賞しました。

プロトタイプを使った検証評価の写真1。アイカメラを付けた被験者がプロトタイプを使用している。

プロトタイプを使った検証評価の写真2。初代レミパンは火をかけたまま鍋肌にお玉を一時置きしたり、一時起きするための小皿を出す必要がある。レミパンプラスはフライパンのハンドル上にお玉の一時置きが可能。

従来型のレミパン(左)とレミパンプラス(右)の比較検証

従来型:火をかけたまま鍋肌に一時置き/小皿を出す必要/お玉を移動する時に汚れる

プラス:フライパンハンドルに一時置きが可能

クライアント名
株式会社Remy
メンバー
田平博嗣、梶川忠彦
タグ
プロジェクト

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